研究概要 |
Aspergillus acleatusの分子量23,000のFl-CMCaseのX-線結晶解析により、立体構造を決定した結果、Bacillus pumilusのキシラナーゼと非常に類似した構造をとっており、一次配列の相同性が認められないにもかかわらず三次構造は殆ど同一であった。この結果は、キシラナーゼで得られた構造機能相関は、広い範囲の酵素に適用できることを示している。そこで、多くの変異キシラナーゼをタンパク質工学の手法を用いて作成し、その機能と変異部位の関係を調べた。 得られた約6万個の変異体より、4個の変異体(N56,N102,N104,F1)が耐熱性を示した。N56、N102、N104は、亜硝酸処理で得、Flは、ギ酸処理で得た。耐熱性キシラナーゼを導く変異型遺伝子の塩基配列を決定し、アミノ酸の変異点を調べたところ、N56ではS26→W、G38→D、T126→Sに、N102では、G38→Dに、N104では、G38→S、R48→Kに、Flでは、S12→Cに変化していた。亜硝酸処理で得た変異体は、すべてG38の変異を含むこと、G38またはS12位置の単独変異で耐熱性を示すことより、これらの位置は耐熱性変換に関して重要であると考えられる。キシラナーゼ立体構造の表面のβシート上、すなわち溶媒と接する位置にある点は注目に値する。熱失活速度定数の算出により、N104では、エンタルピーの増加によって、その他はすべてエントロピーの減少によって熱に対して安定化した変異体であると判明した。 合成基質ρ-ニトロフェニル-β-_D-キシロピラノビオシドが、キシラナーゼと基質の相互作用を調べるためのモデル基質になり得ることを見いだした。本基質に対して反応性の高くなった変異型キシラナーゼを得た。活性上昇の要因は、Vmaxの上昇にあり、変異部位は、S76→Gであった。これは、2つの大きなベータシート間のランダムコイル上に位置していた。分子表面上の変異が活性に影響する点もまた興味深い。
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