研究概要 |
土壌中の有機物分解を制御するための第一段階として、土壌種ごとにその分解量を評価した。供試土壌には粗粒質土壌(富山県入善町)、中粒質土壌(埼玉県熊谷市)および細粒質土壌(静岡市安東)のそれぞれ沖積土壌を、添加有機物には稲わら粉砕物ならびに下水汚泥コンポストを使用した。非生物的物理化学的反応区(非生物区)は本研究では土壌および有機物をクロロホルムで燻蒸殺菌した実験系で行い,生物化学的反応区(生物区)は殺菌しない系で行った。実験室内に設置した土壌カラムに、上記各種土壌の風乾細土を土壌:乾物有機物=100:1(重量比)に混合したものを充填し、土壌水分を各種土壌の最大容水量の60%に保持して各種温度でインキュベ-ション実験を行った。有機物の無機化過程で発生する各種ガス、有機酸ならびにイオン交換反応(NーKCl浸出液)で得られた無機イオンを経時的に定量した。その結果、非生物区の低温処理区5℃では下水汚泥中の無機イオン、水溶性有機物の土壌吸着はほとんど起らず、脱イオン水で容易に浸出されたが、インキュベ-ション温度が上昇するにつれて土壌吸着が明らかに認められるようになった。この傾向は土壌粒子が細かい土壌ほど強くあらわれた。一方、生物区の低温処理区で認められる反応は非生物区とほぼ同一であり、易分解性有機物、各種イオンが水浸出で多量認められた。インキュベ-ション温度が上昇するにつれて、水浸出される有機酸、無機イオンの種類と量は低温処理区の場合の組成と明確に異なり、各種アミノ酸、酪酸、酢酸、グルコ-ス,キシロ-スは消失し,無機イオン量も著しく減少した。これらの実験結果は非生物区においても土壌反応層の温度が高まれば、吸着反応を主体とした反応系が働き、種々の物質が土壌粒子に吸着されること、この吸着反応が生物区の生物に対して、新たな「化学環境」を与え,生物活性に大きな影響を及ぼすことが考えられた。
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