研究概要 |
酸性雨の実態調査:鳥取県下全域17地点に自製の雨水採取器を設置し,適宜回収して雨水のpH,電気電導度,陰陽イオン濃度を測定した.陰イオン濃度の測定にはイオンクロマトグラフを用いた.1991年6月〜12月の各地の月別平均雨水pHは4.52〜4.96で,3.5前後の雨も観測され,全採取地点において前年同期に比べて大きく低下する傾向にあった.雨水中のイオンでpH低下に最も大きく寄与する成分(酸性原因物質)は硫酸イオンであると推察された.大陸の黄砂が飛来する春先には1990,1991年とも雨水pHの上昇が見られ,大陸からの酸性原因物質の飛来も考えられる. 砂丘土壌への酸性雨のインパクト:pH5.6,4.0,2.0に調節した人口雨水2000mm(年間降雨量)相当を黒ボク土及び砂丘土壌カラムに浸透させ,浸透水のpHと陽イオン(Al,Ca,Mg,K,Na)の浸出量を測定した.黒ボク土にpH4.0,2.0,砂丘未熟土にpH4.0,5.6の雨水を浸透させた場合,浸透水のpHは原液より高く経過し,砂丘土壌もかなり大きな緩衝能を持つことが認められた.この原因として,交換性塩基の溶出による浸透水pH低下の抑制のほか,一次鉱物等からの塩基の溶出によるpH低下の抑制が推定された。 植物体へのインパクト:砂丘畑土壌をポットに充填してトマトを栽培し,葉面に蒸留水(対照),天然降雨水,pH3及び4に調節した硫酸,硝酸及び塩酸酸性溶液を30日間に10回計250mm散布し,酸性雨の植物生育阻害を乾物重への影響によって観察した.雨水とpH4区は対照に比べて乾物量が20%,pH3区は30%減少した.対照の黒ボク土では処理の影響は明らかでなかった.また砂丘土壌にトマト,トウモロコシ及びホウレンソウを栽培した別のポット試験でも,トマトとホウレンソウに酸性水散布による乾物重低下が見られ,硫酸酸性溶液で処理したホウレンソウに可視障害(白色斑点)が観察された.
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