飽和脂肪酸であるラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸およびステアリン酸の脂質代謝におよぼす影響をエステル交換油脂を利用し、ラットおよびハムスターを用いて検討したところ、以下の結果を得た。ラットにコレステロール食を与えた場合、血清脂質濃度には影響がなく、肝臓コレステロール濃度はステアリン酸群で、肝臓トリグリセリド濃度はパルミチン酸およびステアリン酸群で減少した。ハムスターにコレステロール食を与えた場合では、血清コレステロールおよび血清および肝臓トリグリセリド濃度には影響がなく、肝臓コレステロール濃度のみステアリン酸群で低下した。無コレステロール食を与えたハムスターでは、血清コレステロールはステアリン酸群で、肝臓コレステロールはパルミチン酸およびステアリン酸群で低下し、血清および肝臓トリグリセリドはパルミチン酸群で上昇する傾向にあった。肝臓コレステロールへのパルミチン酸やステアリン酸の影響の一部は糞中へのパルミチン酸およびステアリン酸の排泄増加に伴う中性ステロイド排泄の増加によるものと考えられた。コレステロール食摂取ハムスターではLDL異化率がステアリン酸でのみ高かったが、無コレステロール食摂取の場合には差はなく、また、LDLレセプター活性にも差はなかった。肝臓、血清などの脂肪酸組成から、飽和脂肪酸はリノール酸代謝に軽度ではあるが異なる影響を与えていることが示された。また、血小板凝集やプロスタグランジン産生に対しても、飽和脂肪酸の種類により影響は異なった。以上の結果から、食餌脂肪の動脈硬化症等への影響を調べる際には、飽和脂肪酸の種類の影響も考慮する必要があることが明かとなった。
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