研究概要 |
ペクチン酸リア-ゼI遺伝子pelIとペクチン酸リア-ゼI遺伝子と相同性の高いpelXの他にペクチン酸リア-ゼIII遺伝子pelIIIがこれら遺伝子と相接して存在することを明らかにし,またこの遺伝子のコ-ドする酵素を精製し,既に精製されその性質が明らかにされているペクチン酸リア-ゼIとII(PLI及びPLII)と比較しその性質を明らかにした。さらにペクチン酸リア-ゼII(PLII)として精製されている酵素の遺伝子,ペクチン酸リア-ゼII遺伝子(pelII)が存在することを明らかにし,pelХは元々あったpelIIに変異が起こって生成したと推定されることを明らかにした。 これら3つの酵素の遺伝子は染色体DNA上で,それぞれ独立して存在した転〓単位をもち,近接してタンデムに位置しており,1個のクラスタ-として存在していることを明らかにした。軟腐病Erwinia carotovora ErについてpelI,II,IIIが存在するが,pelI,IIが通常の培養條件で発現しPLI,IIのみが培養液中に大量検出されることが明らかにされた。PLI,II,IIIはErwinia carotovora Erでは培養液中に能率よく分泌されるが,大腸菌でこれらの酵素が菌体外に分泌されるかどうか調べた。ベクタ-pBR329を用い,pelI,II,IIIが夫々含まれるプラスミドpNN101,pNN2B,そしてpNN3Bを構築し,pNN101,pNN2B,pNN3BそしてpBR329を夫々保持する大腸菌HB101株の細胞分画を行い,PL活性,βーガラクトシダ-ゼ,βーラクタマ-ゼ活性を調べた。その結果,pNN101,pNN2Bを保持する場合,PL活性はすべて厚形質に検出され,一方pNN3Bを保持する場合PLの約90%が原形質に存在し,約10%がペリプラズムに存在していた。pelI,II,III,の産物は,細胞外に分泌されず,殆どが原形質に止っており,これらの産物はともに大腸菌の内膜を透過できないことが示唆された。
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