海洋環境で旺盛に生育する炭酸固定微生物、Hydrogenovibrio marinusを取得した。本菌はdoubling time約1時間と、炭酸固定生物としては極めて速い生育を示し、また窒素飢餓培養においては菌体内に著量のグリコーゲンを蓄積した。本菌は、炭酸ガスの再固定化に有効に利用できると結論された。また本菌は3種類のRubisCO(還元的ペントースリン回路による炭酸固定のキ-エンザイム)遺伝子を持っており、少なくともそのうちの2種は発現していることを確認した。本菌は絶対独立栄養性であり、炭酸固定はその生存にとって必須である。本菌における性質の異なる複数のRubisCO(遺伝子)の存在は、海洋環境における炭酸固定微生物の生き残り戦略の一環と理解される。 日本およびタイ国の温泉より、高温で生育する微細藻類を取得しその分類学的研究および培養特性を検討した。そのうちの一株、Synechococcus strain a-1のRubisCO遺伝子をクローニングし、大腸菌内で大量発現、その高い熱安定性を利用して容易に精製する方法を確立した。 蟻酸をエネルギー源、炭酸ガスを炭素源としてアルカリ環境で生育する細菌を取得し、そのうちの1株(Moraxella sp.)から炭酸固定酵素RubisCOを精製した。本酵素のN末端アミノ酸配列は、水素細菌Alcaligenes eutrophius由来RubisCOのそれと高い相同性を示した。しかし、炭酸ガスに対するKm値は本菌由来RubisCOの方が1オーダー高い値を示した。この差は高アルカリ環境では一般に炭酸濃度が高いことを反映していると考えられた。 各種の好塩菌について、RubisCO活性を測定し、特に好塩古細菌Halofelax属に活性が強い株が多く存在することを明らかにした。
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