研究概要 |
染色体の複製開始を同調化した大腸菌を用いて、複製開始直後の菌体よりoriC-複合体を調製し、その構成成分を分析した。その結果、Hendricksonらによって見い出されていた35K,55K,75Kの蛋白質は,グリコーゲン顆粒由来のものであり、oriC-複合体形成には関係のないことが判明した(J.Bacteriol,1992,174:5454-5456)。新たにoriC-複合体の構成成分として,ヒストン様蛋白質として知られるH-NS蛋白質とSDS-PAGE上で17Kの位置に泳動される成分を見い出した。H-NSの変異株では染色体複製に異常があり、核数の減少や無核細胞の放出が観察された。17Kの成分はRNAであることが示唆された。 DNA分配のモデル系としてFプラスミドのSopABC遺伝子の解析を行ない、SopA蛋白質がATPase活性を持つこと、その活性がDNAとSopB蛋白質によって活性化されることを見い出した。(Mol,Gen,Genet,1992,234:346-352)。 細胞分裂の制御を行なうmre遺伝子群の解析を行ない,mreBCDの変異株中ではペニシリン結合蛋白質をはじめとして様々な蛋白質の発現が異常になっていることを見い出した(J,Gen.Appl,Microbiol,1992,38:157-163)。mreB遺伝子の破壊株を構築し,mreCDの発現にmreBの発現が必要なことがわかった。mre遺伝子群の下流に存在するcafA遺伝子を過剰発現させると,細胞内に繊維状構造体が形成されることが,電子顕微鏡により観察された。cafA遺伝子の機能を明らかにするために,その破壊株を構築した。
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