研究課題/領域番号 |
03453139
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
石崎 文彬 九州大学, 農学部, 教授 (20183163)
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研究分担者 |
殿川 道夫 九州大学, 農学部, 助手 (60038213)
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キーワード | 乳酸球菌 / 抗菌性生理活性物質 / Pediococcus sp.ISKー1 / Bacillus subtilis C1 / Pediococcus damnosus / 乳酸菌のカタラ-ゼ |
研究概要 |
伝統的醸造発酵は、天然由来のミクロフロ-ラをその発酵に望ましい型で維持しながら実施しなければならないが、それはいかなる機構によるものであろうか。また、ヒト、家畜などの健康は腸内フロ-ラが極めて重要な関係にあるとされているが、その維持機構はいかなるものであろうか。このような疑問を解明する目的で、我々はまず、Lactococcus lactis10ー1を分離した経験から、北九州市に江戸時代以来伝わっているというぬか床から抗菌性生理活性物質を生産する乳酸球菌の分離を試みた。我々の分離した、乳酸菌の生産する抗菌性生理活性物質に特に感受性の強いBacillus subtilis C1に対し抗菌活性を示す物質を生産する乳酸球菌1株を分離した。Lー乳酸生産、グラム染色陽性、電子顕微鏡的形態観察などから、本菌をPediococcus sp.ISKー1と命名した。現在、Pediococcus属菌で抗菌物質生産が知られているのは、Pediococcus pentosaceus、Pediococcus acidilacticiの2種のみである。そこで、この2種を主対照としてPediococcus sp.ISKー1の分類学的位置付けを明らかにしようと試みたが、生理学的性質からだけでは結論を出す決め手を欠いていた。そこで、Bergey記載の8株を基準株としてDNAーDNA hybridyzationを行なったところ、Pediococcus damnosus JCM 5886Tと70%近い相同性が見られた。しかし、ISKー1は高い耐塩性があり、最適生育温度は37℃、強いカタラ-ゼ活性があり、アルギニン加水分解性も強くPediococcus damnosusのtype strainとは全く異なるphenotypeを持つ。恐らく、ISKー1は抗菌性生理活性物質を生産する新種のPediococcusであると考えられる。また、本菌の生産するカタラ-ゼはヘムタンパクを持つ真性カタラ-ゼであった。この点もふまえ今後さらに検討する。 また、我々の分離した乳酸菌の生産する抗菌性生理活性物質に特に感受性の強い新菌Bacillus subtilis C1の同定を完了し、投稿した。
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