研究概要 |
インドール環の3位から4位に閉環したタイプの天然物には、LSDなどユニークな薬理活性を有するものが多く、有機合成の一つの標的となっている。しかしながらインドール環4位における配向性および反応性の制御が困難であるため、多くの合成段階を必要としている。放線菌の産生する発癌プロモーター・テレオシジン類の母核化合物インドラクタムV(ILV)は,Val-Trpがインドール環4位に閉環したタイプのシンプルな化合物であり、4位への閉環機構を研究するうえで格好のモデルとなりうる。本研究者らは最近、ILVの4位セコ体N-Me-L-Val-L-Trp-01が放線菌への投与により、高率で4位に閉環することを見い出した。本研究は、この閉環反応を触媒とする酵素系を新規インドラクタム類縁体の合成に応用するとともに、本酵素系のインドール環4位における反応性および配向性の制御機構に関する知見を得ることを目的とした。 N-Me-L-Val-L-Trp-01が放線菌Streptoverticillium blastmyceticum NA34-17株への投与により効率よく閉環した条件に基づき、バリン以外のアミノ酸を組み込んだ合成基質,N-methyl基をN-ethyl基に改変した誘導体、さらにインドール環の6,7位に各種置換基を有する前駆体を取り込ませることにより、約20種の新規インドラクタム類縁体を合成することができた。これらの誘導体はいずれもILVの構造修飾では得られなかったものであることより、これらの発癌プロモーション活性を各種invitro試験にて測定した。その結果、ILVの12位側鎖および6位置換基の疎水性が活性を支配していること。13位における立体要求性が高いことなどが明らかになった。 次に、内生に殆んど存在しない閉環基質N-Me-L-Ile-L-Trp0lを用いて、セルフリー系での酵素活性の検出を試みた。しかしながら、超音波破砕、液体窒素を用いた凍結破砕のいずれの場合にも酵素活性は完全に失われることが判明した。
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