研究概要 |
昨年度の研究で,GUS遺伝子をマーカーとし,タバコBY-2懸濁細胞を宿主とする植物形質転換制御物質を確認する生物試験を確立した。GUS活性は,細胞から調製した無細胞抽出液を酵素源とし,4-methylumberriferyl-β-D-glucuronideを基質とする蛍光測光で求めた。今年度は細胞を酵素源とし,5-bromo-4-chloro-3-indolyl-β-D-glucuronideから生成する青色インジゴ色素の沈着を観察する方法を確立した。本法は,無細胞抽出液の調製及び蛍光測定が不要なため多試料の阻害活性を判定する方法として優れている。さらに,均一性が高い懸濁細胞が生物試験の宿主として優れていたため,数種の植物から懸濁細胞を調製しそのGUS発現能を検討したところ,Ageratum,PetuniaでGUS発現が認められ,この2種も本試験の宿主として有用であることが明らかとなった。 本研究者らは,クラウンゴール形成阻害物質としてoxazolomycinを放線菌培養液から単離し,その阻害がA.tumefaciensに対する特異的な抗菌活性によるものであり,そのエステルは抗菌活性を失うがクラウンゴール形成阻害活性は保持しているという興味深い知見を既に得ている。一方,oxazolomycinと同様に,オキサゾール環を持つオキシデカトリエン酸とβラクトンを担うγラクタムを末端に有するオキシノニルアミンとのアミド化合物であるcurromycin類が放線菌から単離されていた。そこで,curromycin生産菌培養液からcurromycin Bを単離し,そのdiacetateを調製した。両者ともにクラウンゴール形成阻害活性を示したのに対し,curromycin BはMIC6.3μg/mlで抗菌活性を示したがdiacetateは125μg/mlでも活性を示さなかった。この結果はoxazolomycin類の構造活性相関において興味深いばかりでなく,curromycinエステルが特異的な植物形質転換阻害物質である可能性を示している。
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