遺伝的にアスコルビン酸合成能が欠如しているラット(ODSラット)を用いてアスコルビン酸(AsA)欠乏下における6-デオキシ-6-〔F-18〕フルオロ-L-アスコルビン酸(^<18>F-DFA)の体内分布を調べた。5週齢のODSラットをAsA欠乏食にて飼育し、^<18>F-DFA投与30分、60分後におけるODSラットの臓器組織放射能を測定した。ODSラットは正常ラットに比べて血中からの排泄が早く、心臓や腎臓では幾分高い放射能の集積がみられた。一方、脳組織への移行率には両者間に有意差を認めなかった。したがって、ラット体内に存在するAsAは、^<18>F-DFAの体内挙動に顕著な影響を与えてはいないと結論された。次に、虚血損傷部位と^<18>-DFAの挙動との関係を知るため全脳虚血ラットを用いた検討を行った。ウィスター系ラットの椎骨動脈を左右両側とも切断、両側総頸動脈を分離して血管用クリップにて20分間閉塞。正向反射の消失から脳虚血状態にあることを確認した。A群として血流再開と同時に^<18>F-DFAを、B群として血流再開後5日目に^<18>F-DFAを、それぞれ投与した。^<18>F-DFA投与後2時間における各職器および脳局所における%、dose/gを求めた。A群では虚血ラットとshamラットの間に何等かの差は認められなかった。しかし、B群ではshamラットに比べ虚血障害を受けたラットは、組織全体に放射能の取り込み増加が観察された。特に、大脳皮質、視床下部および扁桃体の各組織は顕著に^<18>F-DFA取り込みが増加した。さらに脳組織切片を用いたインビトロの実験系においても同様な現象が観察された。これは、^<18>F-DFAが脳虚血障害の何等かの修復機構に関わっていることを示すもので、核医学診断薬剤として更に詳細に検討し展開できることが示唆された。
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