研究概要 |
昨年度までの検討によって基本原料となるキラルなケトジシクロペンタジエノンの両対掌体の合成法ならびに両者の相互反転法を確立したので,これらを用いて海洋産セスキテルペン類ならびにステロイドホルモンであるエストロンのエナンチオ制御合成を検討した. まず,前者のグループに属する3種の化合物,β-キュパレノン,ヘルベルテンおよびアプリシンに関しては固定した〔2.2.1〕ービシクロヘプタン系の立体化学を反映させてフィシャーインドール合成を行いエナンチオ制御下に4級キラル中心を構築させ,これによってそれぞれ目的を達成することが出来た.フィシャーインドール化反応をキラリティー制御に利用した例は本例が最初であると思われる. 一方,エストロンに関しては固定した〔2.2.1〕ービシクロヘプタン系を背景としてエナンチオかつ立体制御下のディールス・アルダー反応を行い,ステロイド骨格を構築し,さらに固定した背景を利用して合成上最も重要な13位の4級中心の立体選択的な構築に反映させ目的を達成することが出来た.本手法はエストロンのみならず各種の官能基を持つエストロン関連誘導化合物の合成にも容易に適用出来るものであり,薬理学的に重要な各種ステロイド誘導体の合成に広範に活用出来るものと思われる.
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