(1)コリシンE3、E6、及びImmE3、ImmE6の変異体の作製:コリシンオペロンの発現にはSOS誘発以外の、最適化された未知の発現機構が備わっている状況証拠があり、一般の高発現系を利用しただけではタンパク質の大量発現は望めない。そこで、ヌクレア-ゼ活性を持ったコリシンT2Aドメインと、対応するインヒビタ-であるImmタンパク質を、効率よく精製するために、コリシン遺伝子5'末端にNcoI部位を導入し、一方、T2A領域の5'末端とImm遺伝子5'末端にもNcoI部位を導入し、コリシン遺伝子の転写・翻訳開始装置をそのまま利用してT2AドメインとImmタンパク質を直接に大量発現できるプラスミドを作製した。更に、E3ーT2AとE6ーT2Aの特異性決定基を知るため、また酵素活性領域と特異性決定領域を区別するため、各種制限酵素部位を導入したT2A変異体やアミノ酸置換体を作製中である。 (2)NMRによるImmE3タンパク質の立体構造解析:各種の安定同位体標識Immタンパク質を調製して、 ^1Hー ^1H同種核、及び ^1Hー ^<15>N異種核2次元NMRスペクトルを測定し、ImmE3のペプチド鎖に沿ったすべてのNMRシグナルの帰属に成功した。更にこれらの解析により、タンパク質分子の約1/3が、4本鎖からなる大きな逆平行βシ-ト構造をとること、残りは、短い一つのαヘリックス構造部を除いてほとんどがル-プ構造をとること、またβシ-トの片面に疎水基側鎖が、他面に親水基側鎖が集中しており、さきに遺伝的・実験進化的に同定していたImmE3の特異性決定基がβシ-トのこの親水的片面に近接していることを明らかにして、ImmE3の性質をよく説明する分子の全体象が浮かび上がってきた。現在NOEの空間情報をもとにdistancegeometry法によりImmE3分子の三次構造を決定中である。
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