研究概要 |
原子炉圧力容器や一次冷却系配管、ボイラ-、熱交換器用などの主要構造材として使用される8種のステンレス鋼の模擬的溶出状況を、高周波プラズマ発光分光分析装置(島津ICPS-1000)により分析し、また溶出成分の放射化分析法について行った。1.1000℃の加熱処理を行った鋼板で5N硝酸腐食生成物が顕著に高く、Fe,Mo,Zn,Crなどが検出された。熱処理の結果、組織を均一にし、安定状態にするので、一般的には耐食性をよくするが、熱処理による析出が、粒界におこり、鋭敏化により顕著に高腐食の原因となったものと思われる。Crの含有率の比較的高い304L,310S,321が耐硝酸性が良い。溶出100時間迄は時間に比例してFe,Cr増加するが、それ以上は溶出量は逆に減少し、初期には顕著に腐食がおこるが、時間がたつと停止して不動態化する現象を示した。2.曲げ応力を加えた試験片SUS-316Lの経時的な腐食状況ではFe,Crは200時間内まで時間に比例して溶出量は増加し徐々に飽和状態となるが、Moは初期に溶出し、Zn,Al,Vの溶出量は少なかった。溶液が停滞するような角度の曲げ応力を加えた場合、曲げ応力を加えないより、200時間の5N HNO_3による腐食量は高く、検出元素はFe,MO,Zn,Crなどで変わらなかった。4.放射化法では、もっとも鋭敏に検出されたのは^<56>Mnで極めて微量であっても検出が可能であった。熱処理400℃では^<56>Mn、^<60m>CO温度が上がるにつれて他に^<52>V、^<101>Tcが検出されたが、^<56>Mn、^<52>Vが顕著で、しかも^<56>Mnが溶出時間とともに溶出量が増加し、腐食の程度を検知するにはよく、また長期間照射により検出された核種としては^<59>Fe、^<51>Cr、^<60>Coが注目される。
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