本年度は三年計画の初年度でもあり、研究実施に必要な機器の整備と基礎資料の収集・解析に作業の重点を置いた。具体的な作業の内容は以下の通りである。 1、イオンクロマトグラフを購入、これに必要な各種機器・消耗品の整備を行った。そしてこれらを用いた地下水中の陰イオン濃度の分析システムを軌道に乗せた。 2、富士山周辺の湧水(地下水の露頭)の現地調査・採水を行い、イオンクロマトを用いた陰イオン濃度の測定を行った。富士山の全域を対象として採水・調査を行った例は過去にはなかった。今回の一斉調査の結果、湧水(地下水)の水質の地域的な違いが確認された。また八ケ岳山麓の湧水については、既存資料の整理もあわせて行った。サンプルの水質分析の結果、かなりの数の湧水から、肥料による汚染が確認されている。それらの汚染された湧水の分布と、山麓の土地利用状況の関係などについて検討を進めているところである。 2、新潟県五泉市周辺地域を対象に、地下水中の陰イオン濃度についての資料の収集を行った。五泉市周辺は阿賀野川、早出川、能代川による扇状地性の堆積物などで覆われた地域で、消雪用の地下水利用が活発に行われており、また水田などに用いられる肥料に含まれる陰イオンが流動系の区分に利用できるものと推定された。 3、会津盆地の地下水、特に被圧地下水についての資料を整理し、陰イオン濃度を用いた流動系区分の可能性について検討を行った。帯水層の構造などのデ-タが現段階では十分でなく、流動系の区分は行えない状態であるが、ボ-リングデ-タなどが十分収集されれば、流動系の実態を明らかにすることが可能になるものと判断された。
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