研究概要 |
1.脂質転移タンパク質および相同タンパク質の機能 登熟ヒマ種子の脂質転移タンパク質(LTP)は、はじめ、種子に見い出され、果実が発達してくると果皮に多く見い出された。免疫電顕によりLTPの細胞内局在を調べると、種子のLTPは高密度顆粒内に含まれ、この顆粒が次第に大型液胞内に取り込まれ、集合体をつくった。この生理的意義は不明である。一方、果皮のLTPは、ばらばらの状態で細胞壁やクチクラ層に分布した。これらの結果か植物の細胞・組織の構築にLTPが何らかの役割を果しており、LTPがクチンやワックスの生合成に必要なモノマー(脂肪酸)の輸送に働いている可能性が高いと考えている。 2.脂質転移タンパク質および相同タンパク質遺伝子のクローニング 平成4年度までに、ヒマLTP-D,A,Bの単離を目標として、ヒマの胚乳、子葉および胚軸からcDNAライブラリーを作製し、抗体によるスクリーニングを試みたが、成功には至らなかった。次に、LTP-C,Dの子葉での特異的発現を解析するためにゲノムDNAの単離を進めた。昨年度は、PCR法によりゲノムDNAの単離を行ない、イントロン構造を明らかにしたが、上流プロモーターは単離できなかった。そこでゲノムライブラリーを作成し、現在までいくつかのクローンを得て解析している。 一方、LTPは8個のシステインを有し、これが脂肪酸結合に重要と考えられている。そこで、LTP-cDNAを使用してCysをSerに変換させ、glutation-S-transferaseとの融合タンパク質として大腸菌内で発現後、精製し、現在、オレイン酸との結合能を解析している。大腸菌での大量生産に成功し、leader peptideの有、無での活性相関も同時に検討している。
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