褐藻コンブ(Laminaria angustata)およびワカメ(Undaria pinnatifida)を採取し、半乾燥させた後、濾過海水中で遊走子を放出させた。遊走子細胞中のcAMPおよびcGMPをトリクロロ酢酸で抽出し、 ^<125>Iーラジオイムノアッセイにより定量した。ワカメの遊走子にはタンパク質1mg当りcAMPが8ー11pmol含まれていた。この値は、ラン藻細胞において検出された値とほぼ同等かやや高めであった。ラン藻細胞との相異点としては、cGMPが10ー20pmolと多量に含まれていたことである。ラン藻細胞では、cGMPはきわめてわずかであった。 遊走子を暗条件下に置き、光照射直後の細胞内cAMP量の変化を測定した結果、明暗によるcAMP量の大きな変化は観察されなかった。cAMPが光のシグナルを伝達する物質としては働いていない可能性が考えられた。次に、細胞を超音波破砕し、粗抽出液を遠心して得た可溶性画分に ^<32>PーATPを加えて何分かインキュベ-トし、その後SDSポリアクリルアミド電気泳動法・オ-トラジオグラフィ-法により、リン酸化されたタンパク質の検出を行ったところ、cAMPの存在下でのみリン酸化されるタンパク質が検出された。cAMPをセカンドメッセンジャ-とするタンパク質のリン酸化反応は、動物などの情報伝達系では良く知られている実であり、遊走子細胞中にもcAMPーシグナルカスケ-ドが機能していることが示唆された。 糸状性ラン藻(Spirulina platensis)の細胞懸濁液にcAMPを添加すると、細胞が凝集を開始することが観察された。凝集した細胞は水面にマットを形成し、一度形成されたマットは容易にほぐれなかった。藻体の凝集は、1mMレベルのcGMP、ATP、AMPによっては見られなかった。cAMPが藻のマット形成因子として機能している可能性が考えられた。
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