研究概要 |
本年度は藍藻 Anabaena cylindrica より単離したアデニル酸シクラーゼ遺伝子の構造を解析した。昨年までの実験により得られた11.5kbのDNA断片をサブクローニングすることにより、マルトース発酵能を回復させる領域1.8kbを同定し、塩基配列の決定を行った。この領域には1,506bp、502アミノ酸残基からなるタンパク質をコードするオープンリーディングフレームが見い出された。このオープンリーディングフレームのアミノ酸配列のC末端側は真核生物のアデニル酸シクラーゼおよびグアニル酸シクラーゼの触媒領域と高い相同性を示した。 A.cylindrica のアデニル酸シクラーゼには、タンパク質のN末端および中央付近に疎水性アミノ酸からなる配列が2箇所存在しており、1次構造上から膜タンパク質であることが示された。N末端の構造は、正に荷電したアミノ酸残基とこれに続く疎水性アミノ酸からなるαヘリックス構造をとることが予測され、この構造は、これまでに報告されているシグナルペプチドのモチーフとよく一致していた。この酵素は、中央で膜を1回貫通した、いわゆる受容体型の膜タンパク質であることが予測された。ラン藻のアデニル酸シクラーゼが、原核生物よりは、真核生物型に近い構造を示すことから、ラン藻にも真核生物に類似したcAMP依存性信号応答機構が存在する可能性が示された。
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