第一段階のカルシウム代謝に関連する突然変異株の分離は、変異株分離の手法の洗練が足りなかったこともあって、数万株の検定したが、表にあげたものに留まっている。しかしその中にもカルシウム代謝と生物時計のかかわりを示唆する周期の異なる変異株や、光による位相変化に対して不感受性を示す興味ある変異株もえている。したがって今後の課題の一つは、我々の発見した遺伝子のクローニングである。すでにその準備もおわり、実験は開始されている。また、異なった観点からの新しいカルシウム代謝の変異株を分離する実験は、おもにA23187とアクリジン系の薬物にたいする感受性の異なった変異株の分離の実験を行っている。温度感受性時計変異株の分離についても、まだ温度感受性変異株の分離の過程であり、これからも興味のある変異株を得ることができる可能性があると期待している。その理由は時計変異株が予想を遥かに越えて高頻度で温度感受性変異株の中に発見されることである。我々は約200種の中にこれまでにすでに上に述べた3種の時計変異株を得ている。これは通常時計変異株は約4000に1株であることから考えて異常に高い頻度であることが分かる。その理由はこれまで考えられてきた時計の細胞内での独立性に対しての重大な疑義をもたらす。またこの推定は、我々が行ったアカパンカビの時計の生理学的構造の解析によってえられた知見ともよく一致する。これからも従来のような単純な手法による時計変異株の分離ではなく、それが発見された後の遺伝子の機能がわかるような手法による時計変異株の分離に挑戦したいと考えている。
|