SH-EPはケツルアズキ(Vigna mun90)種子の発芽期に特異的に活性を表し、種子貯蔵グロブリンの分解に主要な役割を果たすチオール・エンドペプチターゼである。これまでにSH-EP遺伝子の転写領域を含む約4kbの断片の構造解析を行った。また、種子形成期のインゲンマメ(Phaseolus vulgaris)では、種子タンパク質の集積に伴いさやのエンドペプチダーゼが高まり、さやタンパク質の分解・輪送が起こるが、そのうちの主要酵素EP-Clに注目し、その遺伝子(pEP-Cla)の塩基配列を決定した。EP-Cl遺伝子の5'上流域-1173〜-987と-987〜-767の断片をプローブとして、2日目のケツルアズキ種子核タンパク質抽出液を用いてゲル移動度シフト法を行い、これらのプローブDNAに結合するタンパク質が検出された。しかし、同様の方法により、インゲンマメ発芽子葉では結合するタンパク質は検出されなかった。またEP-Cl遺伝子の5'上流域-1173まで及び-340までをGUS遺伝子に結合させた融合遺伝子を作製しパーティクルガン法により発芽子葉等に導入して、GUS活性の一過性発現量を調べたところ、インゲンマメ子葉ではいずれも高い発現量を示した。これにより-340より下流に発現に必要な配列が存在することが推定された。なお、これらの遺伝子の葉での発現量は低く、器官特異性が見られた。EP-C l遺伝子とSH-EP遺伝子のコードするポリプペチドは互いに高い相同性をもつが、SH-EPと免疫学的に相同な酵素はケツルアズキ果実成熟期のさやでも活性をあらわし、またEP-Clと免疫学的に相同な酵素はインゲンマメ発芽期の子葉でも高い活性を示した。これらのことは、これらそれぞれの植物での発芽期子葉と果実成熟期さやというともにセネツセンス期にある器官では、同一チオール・エンドペプチダーゼ遺伝子が発現している可能性を推定させる。現在、SH-EP及びEP-CI遺伝子のプロモーター活性を形質転換タバコにより解析中である。
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