研究概要 |
最終年度の今年は補足実験とまとめおよび成果の報告に全力をあげた.同時に今後の研究課題として新たな材料の発掘にもつとめた.ハプトネマの微細構造は,Chrysochromulina数種について連続切片法により解析した結果,これまで考えられていた単なる単体の微小管の配列ではなく,これらを互いに連結する構造あるいは微小管とハプトネマER膜やER膜とハプトネマ膜を連結する構造が多数存在することが明らかになった.また,ハプトネマの構造は非対称であり,鞭毛装置や核,食胞など他の細胞構造との関係において絶対配置をとっていることがわかった.そして,ハプトネマのコイリングや屈曲現象のビデオ映像と対比して解析した結果,ハプトネマの構造と行動は1対1に対応していることも明らかになった.生理的側面については,Ca^<2+>によってCa^<2+>のプールからCa^<2+>が放出されるというCalcium-induced calcium release(CICR)機構の存在の有無についてCICR促進剤および阻害剤を用いた実験を行い,その存在を強く示唆する結果を得た.これらの成果を国内外の学会で発表すると同時に論文および総説として公表した.さらに,Chrysochromulinaにおける食作用の分布と様式の多様性の調査を行った結果,新たにハプトネマを用いない餌粒子捕獲の機構をもつ種が存在することがわかった.この種ではハプトネマは食作用に関与しない.このような種の存在はハプトネマの機能の解明をさらにすすめていく上で,有用な研究材料になり得る.
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