今年度の研究では、細胞壁形成の分布の制御に関連して、導管要素の二次壁肥厚に対する二種類の新しい知見を得た。レプリカ法を用い、エンドウ根の導管要素の細胞壁内面における微繊維の配列を調べた。エンドウの根の管状要素は、楕円形の壁孔を持つ孔紋と呼ばれる模様の二次壁肥厚を形成する。このような肥厚では、丁度、岩が点在する川の中の流れのように、平行に走る微繊維が観察された。一方、壁孔が互いに違いに並んでいる所では、微繊維が壁孔の中へ流れ込むように向かって進み壁孔の緑で中断しているのが見られた。このことを合成酵素顆粒の動きに翻訳すると、顆粒が壁孔部の原形質膜領域に入ると合成活性を失うということになる。つまり、導管要素の原形質膜はセルロ-ス合成酵素顆粒を活性化する領域と不活性化する領域とに分かれており、前者が二次壁肥厚部、後者が壁孔に対応しているものと考えられる。一方、表層微小管は二次壁肥厚を裏打ちするように分布していた。薬剤で微小管を破壊すると、本来比較的規則的なはずの紋様が様々に変形した。しかし、二次肥厚部と壁孔の境は依然として明瞭であった。このことは、表層微小管が、原形質膜の二つの領域への分離には関与していないが、二次肥厚の紋様パタ-ンを決定、維定するためには不可欠であることを示している。一方、微小管を薬剤で破壊すると、FーWGA結合ヘミセルロ-スの分布も、二次肥厚と同じパタ-ンで乱れる。このことは、ヘミセルロ-スの沈着も、微小管によって制御されているこを示してする。ヘミセルロ-スはセルロ-スと違い、細胞質中で合成されているから細胞外へ小胞輸送されると考えられることから、二つの異なる沈着機構を共通に制御する仕組みが、微小管を介して働いていると推定される。 局在的細胞壁形成の一例である、イチイの有縁壁孔の形成過程でも、微小管が重要な働きをしていることを明らかにした。
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