当初計画では、水性二層分配法によってミカヅキモから原形質膜を分離し、原形質膜蛋白質を調べその局在性を検討する予定であったが、実際やってみると葉緑体膜が多く混入し原形質膜の純度が上がらないことが解った。そのため、原形質膜を単離し易いタバコBY-2細胞を用い阻害剤によって人為的に不均一な成長をする状態をつくり原形質膜蛋白質を調べることにした。様々な試行の後、APM処理をすると局在的な成長が見られることを見いだした。こうした局在的な成長は局在的な細胞壁の変化に由来すると考えられるので、次にこの局在的な成長にともなって細胞壁の微細構造にどのような変化が見られるかを調べた。タバコBY-2細胞から細胞壁を単離し、ポリリジンを塗ったカバーグラスにはりつけ、100%t-ブタノールにまで脱水して凍結乾燥した。ロータリーシャドーした後、電子顕微鏡で立体的に観察した。また、単離した細胞壁を直接ネガティブ染色して観察した。その結果、APM処理した細胞の細胞壁ミクロフィブリルには、一定の間隔でマトリックス成分が結合していることが観察された。今後、このような構造を構成している多糖類の特徴を明らかにすることが重要であろう。 一方、細胞壁沈着の局在性への微小管の関与について、その普遍性を検討するために、イチイの有縁壁孔の形成過程を検討した。イチイの有縁壁孔は細胞壁の局在的な沈着によって起こるが、その形成過程をSEM、間接蛍光抗体染色法、電顕観察で検討した結果、縁の形成にも表層微小管が関与しており、細胞壁の局在的沈着と微小管との関係は、この場合にもみられることが明らかになった。
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