1.イチイ有縁壁孔の形成過程にも表層微小管が関与しており、細胞壁の局在的沈着と微小管との関係がみられた。2.エンドウ上胚軸の細胞壁内面のセルロース微繊維の配列を立体的に観察する方法を検討、確立し、道管要素の微繊維の配列を調べた結果、微繊維がセルロース合成の無い壁孔部に侵入すると直ちに途切れることが観察された。このことは、道管要素の原形質膜の性質が二次肥厚部と壁孔部とで異なっていることを示している。3.ヘミセルロースの沈着を調べたところ、管状要素中の分布は、二次肥厚パターンに完全に一致していた。ヘミセルロースはセルロースと違い、細胞質中で合成されてから細胞外へ小胞輸送されることから、2つの成分の異なる沈着機構を共通に制御する仕組みが存在するものと推定された。4.微小管阻害剤で処理すると、セルロースの沈着もヘミセルロースの沈着も、肥厚パターンの乱れと全く同じパターンで乱れた。このことは、微小管が二次肥厚部と壁孔部の原形質膜の堺の位置を決めるのに関与していることを示している。5.以上の結果より、次のような仮説を提案した。「セルロース合成酵素複合体やヘミセルロースを運ぶゴルジ小胞は二次肥厚部の原形質膜にのみ融合する。原形質膜に運ばれた複合体は微繊維を合成しながら原形質膜中を移動するが、壁孔部には入りにくい。たまたま入ると解離して失活してしまう。ヘミセルロースは、二次肥厚部にのみ沈着することになる。一方、表層微小管は二次肥厚部と壁孔部との境界の位置を定める。」6.この仮説を検証するために、細胞壁合成にかかわる原形質膜蛋白質を分離、同定しようと試みた。セルロース合成を盛んに行っている時期と合成をほとんど行っていない時期のミカヅキモの原形質膜蛋白質を比較すると、いくつかのスポットで差が見られた。
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