研究計画にしたがい、霞ケ浦湖心の定点観測点において、延べ5回(平成3年6月25日、7月29日、8月28日、9月25日、10月23日)にわたってサンプリング(ミクロキスティス属藍藻を含む湖水の採取)を行った。当初計画では平成4年1月下旬にも行う予定であったが、連日の荒天により船を出すことができなかったため、やむを得ず断念した。これを補完するためのサンプリングを3月中旬に実施する予定である。 採取したサンプルからは、それぞれ100株のミクロキスティス属藍藻を単離した。ただし6月採取分については、サンプル中のミクロキスティス属藍藻の絶対量が少なく、またバイアビリティ-が低かったため、40株の単離にとどまった。単離した藍藻は順次大量培養に移し、6月・7月採取分のうち培養に成功した全株、および8月・9月採取分のうちの一部、合計約150株については凍結乾燥法により試料化を行った。 試料化された株の約半数については、平成4年2月時点でアイソザイムの検出が完了し、遺伝子型が決定されている。解析は継続中であり、所期の目標である遺伝子型組成の確定には未だ至っていないが、途中経過として以下の知見が得られている。 (1)6月および7月採取分については、霞ケ浦における従来の調査でしばしば高い頻度で観察されていたMicrocystis viridisおよびM.wesenbergiiの2分類群が全く検出されなかった。 (2)8月および9月採取分については、M.aeruginosa S1型、M.aeruginosa S2型、またはM.aeruginosa L型のうちの、特定の遺伝子型のものが優占もしくは拮抗している可能性がある。 これらの新知見は、霞ケ浦におけるミクロキスティス属藍藻の遺伝子型組成に経年および季節変動があることを示唆するデ-タとして、重要である。
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