研究実施計画に従い、霞ヶ浦湖心の定点観測点において、ミクロキスティス属藍藻の定期的な採取を試みた。しかし、平成5年は稀にみる冷夏で、低温と多雨のため例年のようなミクロキスティス属藍藻の発生は観察されず、9月に至っても事態は好転しなかった。わずかに得られる試料も、多様度が低くバイアビリティが弱いなど、データの精度という面で多くの問題があった。そこで、研究計画全体の見直しを行い、データの「量」ではなく「質」を重視した解析に転換した。すなわち、平成3および4年の2年間に得られた試料(計603系統)について、(1)従来のスターチゲルに加えてポリアクリルアミドゲルを担体とした電気泳動を行い、ザイモグラムの解像度と同定精度を高める、(2)系統解析の新たなコンピュータプログラムを開発し、データ解析の信頼水準を高める、(3)本研究に用いた培養株の一部をオープンストレインにするため、遺伝子型や毒素組成などのパスポートデータの整備を行う、の3点を中心とした研究を行った。その結果、ミクロキスティス属藍藻が Emergence‐Increase‐Dominance‐Decrease‐Disappearance という周期変動を、4ないし5カ月周期で繰り返していることが確認されるなど、従来の理解を越える新たな知見が得られた。なお、平成6年3月10日の時点でコンピュータによるデータ解析が完了しておらず、研究成果の最終的な取りまとめにはもうしばらく時間が必要である。
|