1)幼若骨格筋で働くアクチン集合の調節因子の構造の解析 ほ乳類の筋の発生過程で発現が上昇するコフィリンアイソフォームを見いだし、この筋型コフィリンのcDNAをPCR法によってクローン化、配列を決定した。ノーザンブロット解析により、筋型コフィリンは骨格筋、心筋、精巣、C2筋管細胞などでの顕著な発現に見いだした。また、ニワトリ幼若骨格筋で発現されるプロフィリンcDNAをクローニング、ほぼ全長の配列を決定した。 2)培養筋細胞内でのコフィリンのアクチン細胞骨格への作用の検討 クローン化されたコフィリンcDNAを用いて大腸菌内でコフィリンを合成、これを蛍光標識して若い筋細胞に多量に注入したとき、細胞内にあったアクチン繊維は速やかに崩壊してアクチンとコフィリンからなるロッド構造を形成した。しかし、24時間を経るとコフィリンの作用は消え、アクチン繊維は再生された。一方、コフィリンcDNAのトランスフェクションにより筋細胞内のコフィリンの発現量を高めたとき、そのままではアクチンへの強い作用は見られず、細胞の熱刺激やDMSO刺激によりコフィリンは活性化され、アクチン繊維の消失とアクチン/コフィリンロッドの形成が起こった。これらより、コフィリンは細胞内でその活性は制御を受けていると考えられた。また、細胞周期に依存してコフィリンのリン酸化が著しく変化、リン酸化がコフィリンの活性制御の一因であることを見いだした。 3)萎縮筋におけるアクチン結合蛋白質の発現変化 筋萎縮が起こる除神経筋やジストロフィー症の筋でコフィリンの発現量の増加を明らかにし、萎縮中の筋でのアクチン細胞骨格の変動にコフィリンの関与を示唆した。
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