研究概要 |
1.ヒトデ卵のDNA複製時期(S期)を検出するためのブロモデオキシウラシルの標識は,前年度の努力で3分程に短縮することができ,その結果,S期の開始時刻と共にその終了時刻も定められるようになったので本年はS期の間での,DNA複製部域の核内でのパタンをしらべた。S期の前半は均一な分布を示していた複製部域が,后半では凝集してくることがわかった。ただし卵をおそく(卵成熟終了后に)受精したときの1回目のS期に限って「線維状」ともいうべき分布のパタンであった。どの場合も複製部域を示す抗ブロモウラシル抗体のラベルと,クロマチンの染色像は一致した。即ちヒトデ初期胚の核にあっては,クロマチンのほぼ全域にわたってDNA複製が同時進行していることが示唆された。 2.1に示す結果の内,複製部域のラベルとクロマチン染色パタンとの比較は,本研究費により購入したコンピューターと画像解析ソフトを使ってなされた。同じソフトを使い共同研究分担者はカエルの卵の受精に伴う表面付活波の進行を解析し,特に受精に関して遺伝的な異常のある変異卵の表面収縮波を正常のものと比較することができた。 3.ヒトデの未成熟卵母細胞と,成熟中の卵母細胞とを人工的に細胞融合した。これにより減数分裂の回数が1回分ずれているような融合体を観察したところ、おくれている側は第2極体を放出しないまま前核化した。減数分裂したあとの核の前核化を促す因子が卵細胞質中に存在することが示唆された。
|