研究概要 |
1.アフリカマイマイの中枢神経節、心臓及び口筋から、約20種類の興奮性及び抑制性のペプチドを単離した。これらのうち、FMRFamide,ACEP-1,achatin-Iは強い心拍増強作用を示し、fulicinは陰茎牽引筋の収縮調節活性を示した。Achatin-Iとfulicinは、その構造に1個のD型アミノ酸を持つことで特徴的である。 2.この動物の心拍動調節に関与する9個のニューロンを同定した。FMRfamide.ACEP-1及びachatin-Iは、心房から単離されたにも関わらず、心房に対しては直接顕著な影響を示さず、心室では拍動頻度と収縮高の増強を引き起こした。免疫組織化学的研究の結果、FMRFamideとACEP-Iの抗血清に強い免疫陽性を示す物質が、脳神経筋と食道下神経筋の多くのニューロン、ニューロパイル、心臓へ行く腸神経及び心房に存在するが、心室には僅かしか存在しないことがわかった。これらのペプチドは中枢神経節で作られ、軸索を通って心房まで運ばれて放出され、心室で拍動増強効果を示すと考えられる。 3.この動物の口筋運動に関与する2対の脳神経節ニューロンと、10対の口球神経節ニューロンを同定し、それらの形態、軸索の走行及び各口節に対する支配様式を明らかにした。その中でも、口筋収縮の修飾機構について提唱した二つのモデル系は注目に値する。一つは、運動ニューロンB4及びその働きを修飾する脳神経節ニューロンと歯舌牽引節からなる系であり、いま一つは、運動ニューロンB10と歯舌伸出筋からなる系である。 4.Fulicinのアナログを多数合成し、陰茎牽引筋を生物検定系に用いて構造一活性関係を調べると共に、免疫組織化学的方法により、このペプチドの分布・局在を探索した。その結果、fulicinはこの動物の陰茎牽引筋の収縮調節に生理的に関与していることを明らかにした。
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