16細胞期のウニ胚から単離した小割球は馬血清存在下で培養すると虚足を生じ、その虚足内に骨(片炭酸カルシウム単結晶)を形成する。虚足成長は、小割球を20℃で培養すると約10時間目にはじまり、培養開始後約15時間目に骨片形成がはじまる。虚足形成開始5時間前までに培養細胞にアクチノマイシンDを投与すると虚足成長、骨片形成が阻害される。そして、骨片形成開始5時間前にアクチノマイシンDを投与すると虚足成長は阻害されないが、骨片形成は阻害される。虚足成長と骨片形成にはそれぞれ異なった時期での異なった遺伝子発現が必要である。虚足成長は、馬血清のかわりにインシュリンを投与することでおこる。インシュリン受容体は、培養5時間目には見出され、その量は増加し、培養10時間目に最高になる。培養細胞の受容体は、哺乳動物のそれより分子量が小さく、チロシンキナーゼドメインをもつか否か不明である。培養5時間目からRNA合成阻害剤を投与すると、受容体発現速度は遅くなり、インシュリンによる虚足成長はほとんどおこらない。インシュリン受容体遺伝子発現がこの時期におこると考えられる。このことは、虚足成長を支えることを見出しているC-キナーゼ遺伝子発現と共に虚足成長開始の重要な機構であり、これらcDNAを得るべく準備中である。一方、骨片形成開始については、胞胚内液又は馬血清をインシュリン抗体で処理し、インシュリン存在下で15時間飼育した細胞に投与すると骨片形成がおこる。従って、この受容体発現について検当中である。骨片形成に必須であることを明らかにしたH^+、K^+ATPアーゼのcDNA作成と共に、この受容体のcDNAを得るべく準備中である。これら受容体を通じての細胞信号のトランスミッターであるG-プロテイン群の同定、及びその発生過程での量的変化についても明らかにした。
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