研究概要 |
平成3年度において,北海道全域,紀伊半島,赤石山地,常盤地域について,白亜紀層の生層序の検討と微化石の採集を行った。この中で、大陸棚から大陸斜面にかけての環境断面を復元できるのは、北海道中南部の,幾春別ー大夕張ー穂別地域に分布する、後期白亜紀のセノマニアンからキヤンパニアン階の地層であることが判明した。この地域の有孔虫群の群集構成と数形態の解析を進めている。生層序については,白亜紀の国際的な階区分を北海道やその他の日本各地の地層で、どのように認識するかが重要な課題として浮かび上って来た。 初年度の研究において重要な成果は、セノマニアン/チュ-ロニアン階の境界付近で炭素13同位体比の2‰の短期間での増大が認められたことである。この変化は、最初ヨ-ロッパ,特にフランス・イギリスのこの境界付近で認められ,その後北アメリカ西部において詳細な変化が測定された。日本では大夕張ー穂別地域と,留萌支庁小平(オビラ)地域と北海道の離れた2地点で,急激なスパイク状の増大が起っている。測定は有機炭素を対象にしたが,この事実は有機炭素の炭素同位体比のスパイクを認めることで、汎世界的な同時間面が樹立されることを証明したという点で重要な意義がある。つまり,同位体比のスパイクの原因としては,炭素12の同位体に富む有機物が,当時の停滞した海洋循環のために酸化されずに海底に保存され,そのために海洋上層部においては炭素13同位体比の増加をもたらすという。海洋無酸素水(OAE)の考えを支持するものである。
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