霊長類の四肢長骨が目全体としてみてみると、一般の四足哺乳類と異なる特徴をもつことを示した。資料としては、外観から上腕骨、橈骨、尺骨、大腿骨、脛骨、腓骨、第3中手・足骨の計測・観察を行ったものが霊長類(ヒトを含む)44属66種、一般四足哺乳類53属60種、これと別に大腿骨・上腕骨中央の丈夫さを示す断面形状計測を行ったものが霊長類(ヒトを含む)22種、一般四足哺乳類17種である。これらは本研究所の資料ばかりでなく国内外の諸機関の好意により計測したものである。断面形状はワイヤ-切断機による切断面又は埼玉リハビリテ-ションセンタ-のCT測定器による断面写真よりの測定を行った。 サルの四肢骨は同一体重の一般四足哺乳類のものと比べて、長さが長く、骨体が太く、とくに横方向の曲げに対し丈夫であり、関節部も大きいことがわかった。また上肢と下肢の骨を比べてみると、サルは体重の大きな種は上肢骨が長く下肢骨が比較的短いといった特徴をもつ。サルは下肢関節部が上肢と比べて大きく、また上肢と比べて下肢の丈夫さが大きい特徴をもつことがわかった。これらの比較に用いた計測項目を体重で規準化した上で主成分分析を行うと、手足の骨を除いた上肢と下肢との計測項目が異なる主成分に基づくことがわかった。またサルと一般哺乳類とは上にあげたような特徴に基づき分離した分布をなす。このときサルのうちで一般哺乳類 に近いところに地上性のものが分布し、一般哺乳類のなかで樹上性の強いものがサルに近く分布する。これらからみてこのようなサルの特徴は、樹上生活に基づくとくにポジショナルビヘイビアによる特徴を示すものと考えられた。ヒトはこの霊長類のなかでは例外的な位置にあり、これもまた直立二足歩行というロコモ-ションによるものと考えられた。現在加齢に伴う適応的変化をみるためニホンザル年齢既知資料の解析を行っている。
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