研究概要 |
本研究は,Glycine属Soja亜属植物の生化学的,分子生物学的および生態学的情報を集積し,その遺伝的分化および変異の構造を明らかにし,ダイズの栽培化および系統進化の過程,それらに対するツルマメの寄与について考察することを目的とした。 得られた成果は,次の様に要約される。 1.日本に自生するツルマメの葉緑体ゲノムに3種の型があることを確認し,その葉緑体ゲノム型の分化からSoja亜属植物の系統進化を明らかにした。 2.ツルマメのミトコンドリアゲノムに見いだした多型について,クローニングを行い,その塩基配列を決め,多型の生起進化機構を明らかにした。これらの多型と栽培ダイズのミトコンドリアゲノムとの関連を追及する基礎として,栽培ダイズのミトコンドリアの物理地図を完成させた。 3.日本各地から収集したダイズ在来種品1053種とツルマメの447収集系統について,それらのアイソザイム遺伝子型から,対立遺伝子頻度の地域的特徴,系統群間の関係,集団の遺伝構造を明らかにした。 4.日本各地にある早生ダイズ在来種のタンパク質と脂質の含有率の変異を明らかにした。特に,極早生在来品種は,高タンパク・低脂質型と低タンパク・高脂質型に明白な分化が生じており,また,脂質の脂肪酸組成においても顕著な分化が認められた。 5.ツルマメの自然集団に観察される蔓型と分枝型は,その生育環境条件によって,繁殖学的および生態学的に分化していることを明らかにした。 6.台湾の北部に限定的に分布するSoja亜属の野生植物は,種子サイズが小さく,特異的アイソザイム遺伝子(Lapl-d)を持っていることから、東アジアに分布するG.sojaとは別種(亜種)と考えられた。
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