研究概要 |
1.栽培品種‘弘大1号'の自家結実率(90%)は‘恵'と同程度に高く,その単為結果性は‘恵'よりも著しく強く,自家結実性品種育成の遺伝資源として重要なものであることが初めて明らかになった。 2.リンゴへの外来遺伝子(apomixis関与遺伝子)導入に関する基礎的研究として、カナマイシン耐性遺伝子及びGUS遺伝子を持つpBI121,及びこのGUS遺伝子を切り出し,除草剤耐性遺伝子(bar)を挿入したpBI321とをそれぞれAgrobacterium tumeraciensへ導入し,これを感染菌とした。マルバカイドウの葉切片と感染菌をN-N液体培地で2日間共存培養し,カルベニシリン(150mg/l)を含むN-Nホルモンフリー液体培地で洗浄後.カナマイシン(50μg/ml)あるいはビアラフォス(1.0μg/ml)を含む選抜培地で培養したところ,耐性カルスを得ることができた。この耐性カルスを4-MUG法とX-Gluc法で検討したところ,明瞭なGus活性が認められた。また,インバースPCRによって検討したところ,1〜数コピーの導入が確認された。遺伝子導入が確認されたカルスから再分化植物を育成することに成功した。 3.リンゴ自家不和合性関与物質について検索を重ねたところ,スターキングデリシャス花柱に存在する花粉管伸長阻害物質は,分子量約73.000の糖蛋白質であると推測された。また,この糖蛋白質は開花時に向けて発現が次第に増加することも,生化学的研究として初めて明らかにできた。 4.M.hupehensisを母本とし,リチャードデリシャス,フレンチクラブ及びズミ5系との交雑,ならびに無受粉による種子の発芽によって得られる子葉を供試して,澱粉ゲル電気泳動法によりアイソザイム多型を調査した。リチャードデリシャスとの交雑後代でのみ酸性フォスファターゼに多型(1/26)が見出された。この結果から,M.hupehensisは条件的アポミクシスを示すspeciesであり交雑母本として有用であると判定された。
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