葉身貯蔵タンパク質は、最終的に胚乳に転流し、貯蔵タンパク質となる。この点を検討するため、葉の老化にともなう胚乳貯蔵タンパク質の変動を検討した。供試品種は、日本型品種からレイメイ、ササニシキ及びコシヒカリ、インド型品種からPanbiraとBlue Belle、ジャワ型品種からRizzottoとLady Wightをもちいた。全品種を通じての特徴は、胚乳の成塾とともに高分子量領域のタンパク質が減少し、貯蔵タンパク質であるグルテリンの塩基性及び酸性サブユニット、さらにプロラミンが増加する傾向を示した。高分子量領域のタンパク質のうち、58KDのタンパク質はアミロース合成酵素であることが知られており、57KDのタンパク質はグルテリンの前駆体であることが知られている。しかし、94KD以上の分子量のタンパク質の性質については現在のところ不明な点が多い。葉身等から転流してきたアミノ酸が、胚乳においてタンパク質に再合成された結果がこのような高分子量域のタンパク質になったものと推察される。胚乳の成熟にともなって象徴するこれら高分子量域のタンパク質の性質に関しては、今後の研究に待つところが多いが、一つの可能性は貯蔵タンパク質の前駆体であり、他の一つは胚乳における各種貯蔵物質の合成酵素の可能性である。今後、放射線によるラベル化などの手法によってこれら高分子量域のタンパク質の性質の解明は進展しよう。
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