イネ科作物の再分化機構を解析する目的で、以下の実験を行った。 1.イネの胚盤由来カルスを用いて、全タンパク質を2次元電気泳動法により解析し、再分化時に新たに出現するタンパク質、および分子量あるいは等電点が再分化過程で変化するタンパク質の存在を明らかにした。 2.上記の特異的なタンパク質を濃縮する目的で、最も差が顕著な時期の培養細胞を大量に集めた。集めた材料の一部を用いて、HPLCの分析カラムによる疎水クロマトグラフィ-によって特異的タンパク質を分離・濃縮できる条件を検討した。アセトニトリルの濃度が25%から50%までの範囲でほとんどのタンパク質が溶出してくることがわかったので、この範囲のグラジェント時間を長くしてタンパク質をいくつかの分画に分ける条件を決定した。 3.HPLCによる溶離条件が決定できたので、更にスケ-ルアップし、分取カラムを用いて大量に特異的タンパク質を分取する条件を検討した。分析カラムの溶離条件を若干変更することで分取カラムの溶離条件を決定することができた。分析カラムを使用した場合にくらべて分取カラムを使用することで約100倍に試料を濃縮できることがわかった。 4.カルスからの発生経路(不定胚分化と不定芽分化)を明確に制御できるイネの培養系を用いて、発生経路に特異的なタンパク質が存在するかどうかを2次元電気泳動法により検討した。その結果、不定胚誘導時にのみ出現する4種のタンパク質、再分化時に両発生過程で共通に出現する2種のタンパク質の存在を明らかにした。
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