イネ培養細胞からの2つの分化経路(不定胚分化と不定芽分化)の制御について解析する目的で、以下の実験を行った。 1.前年度明らかにした、不定胚分化過程で特異的に発現する分子量25kD〜27kDの4個のタンパク質と、不定胚分化と不定芽分化過程で共通して発現する分子量43kD付近の2個のタンパク質のうち、比較的発現量の多い4個のタンパク質を、2次元電気泳動後のゲルから抽出、回収した。回収したタンパク質のN末端のアミノ酸配列をプロテインシークエンサーにより解析したところ、不定胚分化過程で特異的に発現する27kDのタンパク質のみアミノ酸配列を読むことができた。このタンパク質についての詳しい情報を得る目的で、回収したタンパク質をStaphylococcus aureusのproteaseで断片化したものを SDS-PAGE分離後分子量14.5kDと11.5kDの断片のN末端のアミノ酸配列を解析した。これら3種のアミノ酸配列についてホモロジーサーチを行ったところ、既知のタンパク質の中に高い相同性を示すタンパク質は存在せず、このタンパク質が新規のタンパク質である可能性が示唆された。 2.不定胚分化に特異的に発現する分子量25kDと27kDの2個のタンパク質に対する抗血清をマウスを用いて作成し、その経時的変化について検討した。不定胚誘導培地に置床後2〜18日目のカルスを用いてイムノブロッティングにより解析したところ、どちらのタンパク質も不定胚分化カルスに特異的に検出され2日目には既に発現していること、その後増加して15日頃までは発現量が高いが、18日目には減少することがわかった。また、レクチンを用いた解析により25kDのタンパク質はConAに結合する糖タンパク質であることが判明した。
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