研究概要 |
イネ培養細胞からの2つの分化経路の制御に関わるタンパク質を濃縮する目的で、以下の実験を行った。 1.ニンジンと同様、不定胚分化に糖タンパク質が関与するかどうか明らかにするため、数種のレクチンを用いて不定胚分化誘導後の糖タンパク質の変化についてSDS-PAGEで調べたところ、ConA,SSA,及びAAAに結合する糖鎖を持つ分子量30kDの糖タンパク質が、不定胚分化過程で強く発現することがわかった。さらに、詳細な情報を得るため、2次元電気泳動による解析を行ったところ、ConAで染色される不定胚分化カルス特異的なスポット10個を検出できた。ConAで染色される糖タンパク質を濃縮する目的で、ConAをリガンドとするカラムを用いたアフィニティクロマトグラフィーを行った。カラムに吸着した不定胚分化誘導後7日目のタンパク質を74.3倍濃縮した結果、上述のスポットのうち4個のスポットを濃縮でき、また、それ以外に6個のスポットを新たに検出できた。 2.Immunosubtraction法を考案し、分化経路の制御に関わるタンパク質の濃縮を図った。未分化カルスから抽出した全タンパク質でウサギに免疫処理して得た、抗血清をリガンドとしたカルムによるアフィニティークロマトグラフィーを行った。不定胚分化誘導後10日目あるいは不定芽分化誘導後10日目のカルスの全タンパク質をカラムに添加し、非吸着画分(再分化特異的タンパク質)を回収、濃縮した。2次元電気泳動による解析の結果、新たに、不定胚分化特異的スポット6個、不定芽分化特異的スポット2個、及び不定胚と不定芽分化に共通に出現するスポット1個を検出できた。 以上のように、免疫学的手法を適用することにより、不定胚分化や不定芽分化誘導後に新たに発現する多くのタンパク質を検出することが可能となった。
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