研究概要 |
前年度の試験結果から,オオムギの未熟胚培養系におけるカルス形成能及び植物体再分化能は,いずれも連続変異を示し,複数の遺伝子の関与が推測された。本年度はこの結果をふまえ,再分化能の異なる6品種を用い,正逆総当り交雑を行い、計30組合せのF_1と親とについて末熟種子の培養を行った。ダイアレル分析の結果,カルス形成能及び植物体再分化能は,相加効果,優性効果がいずれも有意で,エピスタシスの存在も認められた。なお,日本の1品種を片親にした場合,植物体再分化能は高い方が優性を示す場合や低い方が優性を示す場合があった。植物体再分化率の遺伝率は,狭義で0.78,広義で0.86であった。 さらに本年度は,培養環境の解析を行った。その一つは培養中の通気処理で,その効果を調べた。その結果,供試78品種の約80%の品種については通気処理により不定根の再分化率が高まったが,残りの20%の品種では効果が認められなかった。また培養中の光条件については,暗黒下で再分化の高まる品種が見出された。 最後に再分化植物の染色体及び諸形質の変異を調べた。その結果174個体中半数体と4倍体が各1個体,染色体が異常に小さい変異体が1個体出現した。形能的変異については,踈穂から密穂,またその逆方向の変異が各1個体,底刺長毛から短毛(2個体),短毛から長毛(3個体)が出現した。この他waxの多いものから少いものへの変異(1個体)や,分げつ異常(1個体),根の発育異常(2個体),草丈の伸長(1個体)などが認められた。しかしこれらの変異が遺伝的変異がどうかは後代検定によらなければならない。また,変異個体数が少なかったため,特定の品種が変異しやすいかどうか確認できなかった。
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