研究概要 |
平成3年度以降イネ染色体構造を明らかにする目的でYACライブラリーの構築を進めている。しかしながら最近キメラ遺伝子の形成が問題化してきたため、平成4年度、平成5年度にかけて挿入断片がやや小型化するものの、キメラ遺伝子形成の割合が少ないP1ライブラリーの構築も進め、YACライブラリーの弱点を補足する試みを行ってきた。 P1ライブラリー構築の手法そのものは昨年度末YACライブラリー構築に用いた方法と基本的に同一である。即ち、イネ幼葉より得た高分子量DNAを制限酵素MboI切断した後、パルスフィールド電気泳動(CHEF 170V、15r、パルスタイム3→50秒)を行い80〜100Kb部分を切り出した。beta-アガラーゼによりゲルを分解後、P1ベクターpAd10sacBIIをSacI、BamHI切断して作成したアームにライゲーションした。Pacase,Head/Tailをそれぞれ調節してパケージングした後NS3529株にinfectionしKanamycin入培地上でスクリーニングした。 2000ケのP1クローンから得られたDNAについて、プロラミン(RM4、PR10、PR16)およびグルテリン(RG21)に対応するプライマーを設計し、Polymerase Chain Reaction(PCR)により挿入配列の増幅を試みた。その結果予定された長さのDNA断片がアガロース電気泳動で確認できた。また、電気泳動にPCR産物をニトロセルローズ膜へブロティングした後、cDNAをプローブとしてサザンハイブリダイゼーションを行った結果、RM4(13kDaプロラミン)、PR10(10kDaプロラミン)についてそれぞれ複数グループについてシグナルが確認できた。この結果、イネプロラミン遺伝子を含む長鎖DNA(90Kb)が得られたことになる。今後、プロラミン遺伝子の遺伝子マッピングや、発現機構を染色体レベルで研究するための足がかりとなる。また、YACライブラリーと対応させるための貴重な材料となる。
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