研究概要 |
初年度である平成3年度は,ケイ酸の施用で光合成速度が高く維持される生理的メカニズムの解明と生育に対するケイ酸の効果の品種間差を系統的に明らかにすることを重点に行った.まず最初に上記実験を行う上で必要な大型水耕装置を試作した.本装置は150個体の水稲を長期にわたり培養できるように大きさ,水耕液の量,濃度を設計したもので,これによって精度の高い実験が可能になった.品種間差に関する実験では本装置2台を用い無ケイ酸処理区(-Si区,0ppm),ケイ酸処理区(+Si区,100ppm)を設計,10品種を60日間にわたり培養した.その結果生育には顕著な品種間差があること,ケイ酸は日本型品種では草丈に,インド型では根の生長に効果の大きいことがわかった. 光合成生理に関する実験では,-Si区と+Si区の材料について光合成を支配する気孔および葉肉伝導度,水ポテンシャル,根の吸水速度,暗呼吸速度を蒸散速度との関連において測定した.その結果ケイ酸は気孔の機能に強く影響し過剰蒸散を抑え体内水ポテンシャルを適度に保つ効果が大きいこと,および根の活性を維持し吸水能を維持することが遮光条件下および老化葉での光合成低下を防ぐ要因であることがわかった.また葉面積当りのシリカ細胞数を軟X線によって定量し光合成速度との関係をみたところ供試全品種を込みにした場合,両者間に直線的な関係がみられ,葉面積当りのシリカ細胞数はインド型品種で少なく,日本型品種で多い傾向がみられ,日印交雑型品種は中間的であった. 本年度購入した携帯用光合成・蒸散測定装置は水耕現場で直接光合成・蒸散速度を測定でき同時に要因解析ができる点で研究遂行上極めて有効であった.
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