本研究では、カキ‘平核無'果実に引き起こされるヘタ片除去による果実生長抑制をモデル実験系とし、果実肥大を担う要因を明確にすることを目的している。昨年度の結果より、果実のCO_2交換速度及び果実内糖代謝が果実肥大の大きな要因である可能性が示された。そこで本年度は以下のような調査を行った。 1.ヘタ片除去によって引き起こされる糖代謝の変化とインベルターゼ活性との関連を調査した。その結果、ヘタ片除去によって果実内のブドウ糖と果糖が増加せず、ショ糖合量が増えることが確かめられ、それと同時にインベルターゼの活性増加が顕著に抑制されることがわかった。 2.ヘタ片除去による果実のCO_2交換速度の低下と同化産物の果実への転流速度の低下との関係を安定同位元素である^<13>Cを用いて調べた。その結果、ヘタ片除去による果実への同化産物の転流速低下は処理後10日目頃から認められ、果実のCO_2交換速度の低下が始まる時期と一致した。 3.ヘタ片除去によって起こると思われる果実の水分状態の変化と肥大抑制との関係を調べたところ、果実の水ポテンシャル・浸透ポテンシャルはいずれもヘタ片除去によって増加し、果実への水分の移動が抑制されていることが明らかとなった。しかし、これら水分状態の変化はヘタ片除去後、1ヵ月以上経過してから認められた。 4.果実生長第3期の開始直前(成熟相への移行期)に果実のCO_2交換速度が急激に上昇することが認められたが、ジベレリンとエスレルによってこの移行期への開始時期を制御すると、果実のCO_2交換速度の上昇もそれに一致して制御されることが明らかとなった。 以上の結果より、果実のCO_2交換速度が果実肥大と密接に関与することがわかったので、現在このCO_2交換速度を制御する要因について調査を進めている。
|