本研究は、カキ果実のヘタ片を除去すると果実生長の抑制が引き起こされることを利用し、これをモデル実験系として、果実の同化産物を集積する機構を明確にすることを目的として行った。 1.ヘタ片除去によって果実内に引き起こされる変化を‘平核無'果実で調査した。その結果、ヘタ片除去により、果実内のジベレリン含量およびアプサイシン酸含量が低下することが明らかとなった。さらに、ヘタ片除去処理は果実内の糖組成に影響を及ぼし、ヘタ片除去により果実生長が抑制された場合、果実内でのショ糖の分解が抑制され、還元糖の蓄積が減少した。カキの同化産物転流形態はショ糖であるので、果実内でのショ糖の分解阻害はシンク・ソース間でのショ糖濃度勾配の形成を抑制し、同化産物の蓄積阻害を引き起こしている可能性が示唆された。 2.ヘタ片除去によって果実内の糖組成が変化し、そのことが同化産物の集積阻害の要因となっていることが考えられた。そこでカキ果実中での糖代謝を制御している酸性インベルターゼ活性がヘタ片除去によってどのように影響されるかを調査した。その結果、ヘタ片除去によって果実生育が抑制された場合には、果実生長第3期における酸性インベルターゼ活性の上昇が抑制されることが明らかになった。このことは同化産物の集積に果実内の糖代謝関連酵素が大きな要因となっていることを示唆していた。 3.ヘタ片除去によって果実内の糖代謝関連酵素が影響される機作を検討した。果実のCO_2交換速度はヘタ片除去によって顕著に抑制され、果実肥大に対する抑制効果が大きい第1期処理でその阻害が顕著であった。果実のCO_2交換速度は呼吸速度を反映しているものと思われ、呼吸阻害によるエネルギー獲得の低下が果実内の糖代謝関連酵素の合成を抑制し、果実の肥大抑制を導く原因として働いているものと考えられた。
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