研究概要 |
1.江戸時代から明治時代の古い栽培品種15品種について,果実成熟期におけるエチレン生成量,ACC含量,エチレン生成酵素(EFE)活性ならびにMACC含量の動きを測定し,各品種の特性を明らかにした。関東地方在来の品種はエチレン生成量が多く,裏日本在来の品種は晩生でエチレン生成量が著しく少ない傾向にあった。 2.成熟期とエチレン生成量に著しい差のみられる3品種,新水・二十世紀・晩三吉について,ACC含量,MACC含量およびポリアミン含量を比較した。エチレン生成量が多く貯蔵性の劣る新水では,ACCがマロニル化されることなく大半がエチレンに変換されるのに対し,エチレン生成の少ない二十世紀と晩三吉では,ACCの大半がマロニル化されMACCとなり,エチレンに変換されるACCはわずかであることが明らかとなった。さらに新水はポリアミンの中でスペルミジンが多くプトレシン含量が少なかったのに対し,二十世紀と晩三吉ではプトレシンが多くスペルミジンが少ないことを明らかにした。 3.新水と同様にエチレン生成の多い品種菊水を用い,成熟20日前に2種のポリアミンであるスペルミジンとプトレシンをそれぞれ100〜200ppmの濃度で果実に塗布処理し,成熟に及ぼす影響を調べた。スペルミジンは果実の成熟を著しく促進したのに対し,プトレシンは抑制した。 4.2および3の結果から,二十世紀や晩三吉のエチレン生成が少ない原因は,ACCがマロニル化され生理的な役割をもたないMACCに変換されることによるとみなされた。さらにポリアミンの一種プトレシンがこのACCのマロニル化促進に強く関与していると考えられた。
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