セルトレイ苗は定植の作業能率がよく、植え付け後の活着が早いなどの利点がある反面、小さなセルと少ない培地で、しかも高密度で育成されるために老化苗になりやすく、逆に若苗で植えようとすれば根鉢が崩れやすいという欠点がある。そこで、セルトレイによる苗生産について検討し、つぎのような成果を得た。 1.挿し木および育苗に適した培地組成 セルトレイ苗の場合、挿し木と発根後の育苗は同じ培地で行われる。物理性の異なる培地に挿し木して発根とその後の生長をみたところ、夏季には発根と生長に対する培地組成の影響は少なかった。条件のわるい冬季には、培地の空気率が低く、水分率の高い培地で発根が抑制された。 2.苗群落内部の環境 異なるセルサイズのトレイを用いて、苗がよく繁茂したときの群落内部の温度、相対湿度、光合成有効放射(PAR)透過率を調べた。昼間の群落底層部の温度は外部より低く、相対湿度は高く、とくにセルサイズの小さなトレイでそれが著しかった。底層部のPAR透過率は、いずれのトレイでもほとんど0%であった。下位葉が黄変し、苗が老化するのは、とくに弱光に原因があると思われた。 3.セルサイズ及び育苗期間と苗質 セル容積が6mlと12mlの移植機用トレイにキクを挿し木し、適正な育苗期間を検討した。その結果、12mlのセルで挿し木後20日間以上育苗してもセル内ではほとんど生長せず、発根すればできるだけ早く植え付けるのがよかった。 4.機械移植用キク苗生産 機械移植用の苗は、根鉢が崩れないものでなければならない。そこで、移植適期の若苗の培地を薬で凝集させることを試みた。その結果、凝集剤CB-1を挿し木用土1lあたり7g添加することにより、挿し木15日後には機械移植できる苗が得られた。
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