前年に引き続き交配実験を行い、得られた実生についてスラブゲル電気泳動によるザイモグラムを作成し、アイソザイム多型の解析を行い、ブドウ属植物の品種分化について解析を進めた。これまでのGPI、PGMに加えてSOD、IDH、FDH、AAT、GDHの5酵素について分析を進め、IDHでは1遺伝子座、7対立遺伝子を確認し、遺伝様式はメンデリズムに適合しないことが確認された。メンデル遺伝に適合しない理由は、致死遺伝子との連鎖が考えられ、このことはIDHが品種群の成立、分類を明らかにするには重要なマーカーになる得ることを示唆している。また、SOD、FDH、AAT、GDHの4つの酵素については、それぞれに3遺伝子座、1遺伝子座、2遺伝子座、1遺伝子座が確認でき、そのうちバンドが明確に表示されなかったAAT-1を除く6つの遺伝子座でメンデル遺伝の適合性が確認された。 次いで育種素材となりうる遺伝資源の情報管理にデーターベースを利用し、育種研究の高率化を図るためのシステムの構築を行った。遺伝資源情報としては、文字情報と画像情報が主要である。ブドウでは文字情報として、来歴、生態、形態、耐病性及び生化学的特性(含有成分、色素・アイソザイム)が、一方、画像情報としては、新梢、成葉及び果実が農業及び農学分野で重要である。そこで、上記の情報処理に適したシステムの構築を行った。 システムを制御するコンピュータにマッキントッシュIIsi(アップル社)、文字情報処理にはカード型データベースソフト(ファイルメーカーII、クラリス社)、画像情報処理にはデジタル画像処理装置(DP-100、フジックス社)と連動した画像データベース(グラン・ミュゼ、コーシンググラフィックシステムズ社)を用いた。文字情報ではデータの多重検索が、一方、画像情報ではデジタル画像化によってデータの保存・加工が容易になった。これらの情報は、光磁気ディスク装置(AF55、フジックス社)を用いることによって通常のフロッピディスクに比べて処理速度並びに記憶容量が大幅に向上した。
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