研究概要 |
ナナホシテントウについて以下の如く休眠の生理機構を追求した。 (1).休眠の生理的特徴:成虫の呼吸量は夏季に激減し、卵巣発育は完全に抑制され、血液中には休眠に特異的なタンパクの出現が観察されたことから、夏眠が真の休眠状態であることが確認された。 (2).休眠の内分泌支配:成虫の脳の中央部及び側方部には神経分泌細胞群が存在し、更に両細胞群の間には中間神経分泌細胞群が存在していた。この中間神経分泌細胞群の機能は夏眠に伴い著しく低下することから、脳ホルモンの分泌細胞として休眠制御に関与している可能性が示された。一方、夏眠に伴いアラタ体の神経分泌細胞の機能は低下し、側心体には脳ホルモン顆粒の蓄積がみられたことから、脳ホルモンの分泌が抑制されることにより、アラタ体の内分泌活性が低下して休眠に入るものと推測された。 (3).休眠の支配要因:種々な温度・日長条件下で幼虫を飼育し、得られた成虫について産卵状況と呼吸量の変化を調べタ結果,初夏の季候条件下で生殖休眠が誘起された後、更に夏季の高温・長日条件によって成虫の代謝機能が阻害されて、休眠に入ることがわかった。 (4).休眠個体の幼若ホルモン(JH)の定量:成虫の血液を採取し、脂質分画を抽出し、TLCで精製し、HPLCでJHを分析したが、微量過ぎて理化学的分析法では定量できなかった。今後は生物検定法によって休眠個体のJH量を調べることが必要と思われる。
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