研究概要 |
可動巣枠式巣箱による飼育法が確立したことにより,ニホンミツバチの蜂ろうで作製した人工王椀で女王蜂の人工養成を試みたところ,内径6.7mmの王椀で良好な結果を得ることができた.さらにプラスチック製の人工王椀を用いる方法も確立することができた.セイヨウミツバチのロ-ヤルゼリ-(RJ)を利用したニホンミツバチ女王蜂養成を試みた.孵化後1〜2齢幼虫を用いたRJ区では羽化個体を得ることができなかったが,10%のショ糖を添加したRJを孵化後3日齢幼虫に与えたところ,僅かではあるが女王蜂と働き蜂の中間型を得ることができた.自種のRJでは高い生育率と女王蜂の分化が認められるが,両種のRJの成分に生育に影響をおよぼす程の差があることが示唆された.同一蜂場内に併飼したセイヨウミツバチ,ニホンミツバチの両種コロニ-内への花粉搬入率の季節変動を調査した.その変動パタ-ンは種間で類似しており,搬入率は6〜8月にかけて最高値に達した.また,花粉トラップで採集した花粉だんごの色から両種の訪花特性を比較すると,セイヨウミツバチの方が植物の種数が多く,その多様度も高い結果となった.花粉だんごのサイズと重量を比較すると,セイヨウミツバチの方が大きく重かった.しかし,働き蜂1頭が運び得る花粉量と体重との比では大差は認められなかった.発信音記録用観察巣箱から,最長1300mまでの餌場にニホンミツバチを誘導し,距離と発信音パルス長との関係を解析した結果,北限の亜種ニホンミツバチは原産地の東南アジア亜種より遥かに広いフリッシュが報告したセイヨウミツバチのそれに匹敵する採餌圏をもっと推察された.ニホンミツバチの対ミツバチへギイタダニ抵抗性とセイヨウミツバチ,ニホンミツバチ間の巣門における扇風行動の向きの違いに関する原因の究明については,それぞれセイヨウミツバチでの予備的な実験を進め次年度のニホンミツバチでの解析への準備を整えた.
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