研究概要 |
同一蜂場内に併飼したセイヨウミツバチ,ニホンミツバチの両種の花粉採集行動の季節的な変動パターンは基本的に類似していた.また,訪花植物の多様度にも両種間で顕著な相違点は見出せなかった.しかし,花粉だんごの分析から訪花植物の種を同定すると,特に多くの植物の開花が見られる時期には違いが認められ,両ミツバチの花への嗜好性は異なっているのではないかと考えられた.両種の収穫ダンスを比較し、餌場までの距離とダンス速度(および距離コードとしての音信号の長さ)の関係を解析した結果,ニホンミツバチの距離コードは同種の東南アジア亜種のそれより,むしろセイヨウミツバチのそれに近いことがわかった.またその結果を基に,自然の蜜(花粉)源から帰った帰巣蜂のダンスから両種の採餌距離を推定した結果,ニホンミツバチの平均的採餌圏は半径2.2km,セイヨウミツバチのそれは3kmとされた.蜂ろうおよびプラスチック人工王椀でニホンミツバチ女王蜂の人工養成法を確立したことにより,ニホンミツバチ女王蜂の人工授精を試みた結果,ニホンミツバチ雄蜂一匹当たりの精液採取量はセイヨウミツバチの1/4以下であった.採取した精液1〜4mulを人工授精した結果,ニホンミツバチ女王蜂の成功率は25%と低かった.この理由として採取した精液の中に,受精阻害となる粘液が混入し易いことなどが考えられるが,今後の技術的な改良によって,人工授精による女王蜂の生産は十分可能であると考えられた.これまでトウヨウミツバチはミツバチヘギイタダニを齧り,排除すると言われていた.そこでセイヨウミツバチに寄生していたミツバチヘギイタダニを人為的に日本亜種であるニホンミツバチに寄生させることにより,ニホンミツバチのダニに対する行動を観察した.その結果,ニホンミツバチでは落下したダニの多くは触肢や脚に負傷がみられ,その割合はセイヨウミツバチより高いことが観察された.
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