研究概要 |
本年度各研究者が展開した実験及びその成果をまとめると以下のようになる。 1)殺虫活性の強い菌株の分離と性状解析:北海道各地の土壌並びに死亡昆虫から多数のBT株を分離した。これらのBT株をカイコに対する殺虫活性を指標にして検定したところ、殺虫活性の強いことで知られているsubsp.sottoよりも数倍から100倍も高い殺虫活性を有する菌株がいくつが発見された。そのうち6株はヤマトヤブカ(Aedes japonicus)の幼虫に対して強い殺虫活性を示すことが判明した。これにの殺虫性タンパク質(ICP)について電子顕微鏡並びにSDSポリアクリルアミド電気泳動法を用いて解析したところ、これらの菌株のICPはそのアミノ酸配列がsubsp.sottoとは若干異なっており、そのことが結晶形態や殺虫活性の違いに影響していることが推定された。 2)BT菌株の新しいスクニ-ニング法:上で得られた結果から土壌並びに死亡昆虫から、今後さらに有用な菌株が分離できる可能性が高いことが判明した。そこで有用菌株のスクリ-ニングを遣伝子レベルで迅速に行うことを目的として以下の実験を行った。まず、これまでに報告されたICP遣伝子のうちCry I A(a),Cry II A,Cry II B遣伝子に対するプロ-ブを合成し、PCR(polymerase chain reaction)法を用いて上記のヤマトヤブカに殺虫活性の見られた6株のICP遣伝子構成を調べた。その結果、殺虫活性の強い株(ACP10ー4,ACP10ー67,GSKー1)と弱い株(ACP10ー8,ACP10ー66,KNB5ー1)は遣伝子構成の違いとして明暸に区別できることが判明し、この方法は今後のBT菌株スクリ-ニングに有効であることが示された。これらの研究成果は国際学会で発表されると共に学術雑誌に報告される。
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